社説2 BSE、政官の責任を問う
構造がゆがんでいると、そこで交わされる言葉も異様なものになる。日本ハムグループの食肉偽装に絡んで、子会社の営業活動の「自粛」を、農水省が解くとか解かないとか。自粛を他者が解除するなど、そもそも日本語として成り立たない。
悪事が露見した家来は、お上の怒りを恐れ、自ら謹慎して許しを待つ。お上はその殊勝さに免じて……。まるで時代遅れの芝居がかった図式が、この問題にはつきまとう。
日本ハムの最初の社内処分が、社会の常識に比べてずいぶん甘い内容だったのは間違いない。しかし、農水省がそれを大甘などといって、さらなる処分を強要するのも筋違いである。公僕は法に基づいて不正を刑事告発するのが役目だ。
消費者と市場の厳しい視線をきちんと受け止められず、創業者へのおもんぱかりに終始すれば、日本ハムという企業は、消費者と市場から痛烈なしっぺ返しをくらう。これが社会のルールである。法的な根拠のない役所の指導は、むしろ不透明な裁量・手心行政を生み、利益誘導、あっせん利得など、政官業がもたれ合う「構造不正」を誘発する。
BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)の日本上陸を許したのもこの構造だ。科学的な警告を無視し、仲間うちの飼料業界の事情を優先し、肉骨粉や代用乳用の脂肪など、リスクの高い飼料の輸入や流通に、歯止めをかけなかった農水省の失政である。
全頭検査前の国産牛肉を税金で買い上げる制度は、鈴木宗男議員ら農水族議員が、買い上げ単価や予算枠にも細かく口を出して、急きょ実現した。その制度設計のずさんさにはさすがの農水省内部からも批判が出たというが、止まらなかった。
国産を証明する解体処理証明書は不要とされ、市場から隔離するだけだったはずが、いつの間にか焼却処分に変わった。偽装は簡単、証拠は残らない。国産同様に売れ残っていて原価の安い輸入肉を買い取ってもらえば、その分は利益が出る。
悪魔の誘いにすぐ乗る企業倫理も問題だが、税金をむさぼる構造不正が、いとも簡単に制度化された仕掛けの解明こそ急務だ。農水省は第三者委員会で調査するというが、司直の手が必要かもしれない。