混沌からの秩序

 

著者      I.プリゴジン   I.スタンジュール   

訳者      伏見康冶    伏見譲    松枝秀明

出版社     みすず書房

 

    この書物は、複雑性の科学と生成の理論を述べた好著でいまや古典となっている書物である。1984年が刊行年だが現在の科学の行方を的確に予言し、21世紀への課題を提示しているといえるだろう。

 

    時間の意味を明らかにし、生成をテーマとし、生成をどのように定式化することができるか明快に示している。言葉の定義、記述のルールを定めた点でその後の複雑性に関する理論の発展に寄与した功績は非常に大きい。

 

    私がこの本を読んだのは1992年プリゴジン博士が来日した年である。博士の講演を直接聞き、まだ知らなかった世界が広がっていくのを感じた。はじめはぼんやりとしか思想の骨格がわからなかったが、この本を読み、身の回りに見られるごくあたりまえのことを非常にわかりやすく述べていることに気が付いた。

 

    自然界に見られる不思議な現象を解明し、どのように考えるべきかプリゴジン博士の化学者としての知識にもとづく見解が述べられている。そしてこれはそれまで誰も言わなかった考え方である。

 

    しかし、この書物の真価はそれだけにとどまっていない。幅の広いものの見方に教えられることが極めて多く、非常にインパクトの強い書物である。そして今でも私が最も信頼している書物である。社会人となってから触れたこのような思想が、その後の人生の糧になっていることをこのごろ改めて感じている。

 

    この書物は科学であり、文学であり、思想であり、芸術である。博士の誠実な人となり、真実に迫ろうとする気迫がにじみ出るような書物である。私にとって世界観が変わる一冊の書物であった。これまでに読んだ書物の中で真っ先に挙げたい書物である。