天使のおそれ   ANGELS FEAR

 

著者   グレゴリー・ベイトソン  メアリー・キャサリン・ベイトソン

訳者   星川 淳

出版社  青土社

本書は平成4年に購入し、私にはいまでも大きな課題を残してくれている。

     

    グレゴリー・ベイトソンと娘がおこなう、感受性の強い会話が印象的である。

 

    生物の獲得形質遺伝の問題で端的にみられることだが、つねに出てくる相互関係は単純な二者関係ではない。この相互関係は獲得形質として確定するのに、受精時に出会う単純な二者択一式の類似性テストをくぐるだけでなく、相互関係が二者関係からより複雑なものになってゆき、収束しようとしても複雑さが一方的に増大するということが言える。

 

    相互関係はこうして、関連はあるけれどもけっして完全な類似性をもたない「命題のネットワーク」どうしをはめあわせたり、ぶつけたりという込み入ったものとなる。そして、この複雑さの増大から導かれる第二の道筋として階層的組織化という事実が浮かび上がってくる。これが描き出そうとしている全体図の一構成要素である。

 

    解決の方策としてはじめに手のつけられる手段が、「階層化」というわけだ。分類・整理はだれしもはじめに物事を解決しようとして考えることだ。自然の中ででも同じ階層にいれば気が付かない新たな形質を、量がまとまることにより新たに獲得するということもある。これは新たなクラスに入らないと分からない。量が質に転化するというオーガニックを想像させる。

 

    現象の複雑さが次第に手におえなくなり始めてくると、それに対処するオーソドックスな手続きとして還元論が威力を発揮する。観察された世界のエレガントな相互連結に与える損傷を最小限に抑えるため、データから一歩退いて、マッピング作業をどう簡略化すればよいかを考えることになる。世界とそれに対するわれわれの関係はこの場合でも生物学的な性質を保存する。

 

    これは、非常に深遠な洞察だ。還元論は最近評判が悪いけれど、バランスを保った状態でなんとか切り抜けていこうと思えばどうしても切捨てが必要になってくる。エイヤーの決断が必要だというわけだ。選択の重要性、不可避性がここで認められる。

 

    この書物の中でも、すべてはつながりにあるわけだから、ようするにわれわれはひとつのトートロジーを地図化しようとしているとの指摘がある。私の関心事である地図ということにはこのような地図もある。そしてこれは人類だけでなく等しく生物全般にいえることといえる。

 

    地図化するとはなんと困難なことか!そしてなんとたやすいことか!