アンナ・カレーニナ

 

著者           トルストイ

訳者           原 久一郎

出版社          新潮文庫

 

昭和27年10月初版発行

購入は、昭和40年4月(1965年)新宿紀伊国屋・・実に30年前である。

 

    小説の筋は忘れてしまった。アンナが自らその命を絶つところでの必然性というようなものに納得していた気がする。しかしなによりこの小説に私がいまでもこだわるのは、人間の関係の最もむつかしい面、最も大切な面を端的に提示してくれているそのテーマにある。

    なにがアンナを導き、どうしてこのような結末になったか。自分ではどうしようもないこと、理屈や常識では解決し得ないことが現実にどこにでもあるし、普通の人ならばその中で苦しみや悲しみを抱えて生きているのだ。

    この小説の迫力はまさにそのどうしようもない流れを読む人に体験させるところにある。20歳になったばかりの頃に読んだ印象は非常に強烈であったし、またやりきれなさを感じたことも事実である。

    人と人がお互いに理解しあい、やさしく思いやることのできる普通の生活がどうしてむつかしいのか。人間はその余裕を持つことが苦手らしい。悩みの多い人はこれを読むと自分が客観的にどうなっているか少しはわかるだろう。