めがね

 

    先週金曜日に職場でメガネがなくなった。

    職場はビルの6階にあり、仕事がおわって地下まで降りて、地下鉄の通路を歩いているとき、売店の近くで公衆電話をかけようとしてメガネのないのに気が付いた。あれっ!どうしたんだ。

    いつもメガネははずすと胸のポケットに入れる習慣がある。

    いそいでポケットとかばんの中を探したがやはり、ない。

    あわてて職場に戻り、残業をしている同僚の間をうろうろして探し回った。

    たしか今日、行動範囲はこの机からこの壁までの間だ。いやこちらにも行ったぞ。そう思いながら机の上やロッカーの上をのぞきながら見て回ったが、ない。

    ひょっとして机の中かな?そう思って引出しを開けてみたが、ない。

    なんとか記憶を呼び戻して思い出そうとしたが、どうしても思い出せない。

    30分ほど必死に捜したが見当たらないので、やむを得ず今日行動した範囲のところへ尋ねにいった。

    ビルの管理室、市役所、地下鉄、喫茶店。しかしどこも反応が無かった。

    めがねはゆるい近眼に合わせたものだが、最近進んできた老眼のせいで近くを見るときにはそこらにぽいと置くくせがある。しかたがない、そう思って帰途についた。

    家では家族にもう年だねと言われ、落ち込んだ。

    今週の火曜日、用事があって会社の書庫の奥まったところにある縦のロッカーの前を通りかかったとき、いきなり電気が走った。そうだきっとここだ。

    いそいでロッカーのかぎを取りに戻り、かぎを開けた。あった!縦のロッカーを2段に重ねた上のロッカーを開け、仕切り棚の上にわたしのメガネがあった。顔の高さより少し高いところなので上を向けば見えるところだがすぐわかった。

    そういえば下の棚に置いてある書類を見ようとして無意識にめがねをはずし、用事が終わったときに下を向いたまま扉を閉めて鍵をかけたんだ。これではすぐにわかるわけがない。

    しかしどうしてここにあるという記憶が私の中に残っていたのだろう。いまでもよくわからない。